医療のお金のお話。診療報酬改定って何?背景や制度を解説
医療機関が提供する診療行為や医療サービスの対価として国民健康保険などの公的医療保険から医療機関に支払われる報酬が診療報酬です。この診療報酬が6月1日に改定されます。診療報酬とはどのようなもので、なぜ改定が行われるのかといったことはわかりづらいでしょう。そこで、改定の時期に合わせてこの記事では診療報酬の概要や、なぜ改定が行われるのかなどを詳しく解説します。
診療報酬改定は2年ごと
診療報酬の改定は定期的に行われています。まずは診療報酬がどういったサイクルで改定されているのかを確認していきましょう。
診療報酬の改定は基本的に2年に1回行われています。直近では2022年度に診療報酬の改定が行われているため、次の診療報酬改定のタイミングは2024年度ということになります。診療報酬の切り替わりのタイミングは、毎回4月1日ですが今回は6月1日に新たな診療報酬が導入されます。
診療報酬改定とは
国民健康保険やサラリーマンの方が加入する健康保険などの公的医療保険から医療機関に支払われる報酬を見直すことが診療報酬改定です。薬の価格については毎年見直しが行われ、診療行為に対する対価の見直しは原則2年に1回行われています。診療行為の対価は1点10円で計算されており、初診料は288点、再診料は73点など診療内容ごとに細かく点数が決められています。この点数の見直しが診療報酬の改定です。
診療報酬は、医師の人件費や技術料といった「本体」部分と、薬の価格や医療機器の材料費などにあたる「薬価」の部分に分かれます。さらに本体は、医科診療報酬、歯科診療報酬、調剤診療報酬に分かれており、それぞれ改定率が異なります。2024年度のそれぞれの改定率は、診療報酬本体がプラス0.88%、薬価等がマイナス1%、全体ではマイナス0.12%となりました。各科の改定率は、医科がプラス0.52%、歯科がプラス0.57%、調剤がプラス0.16%となっています。
そもそも診療報酬とは
一般的なサービスや商品を購入する際に多くの人は、料金を確認した上で購入を検討すると思います。医療機関において、医療サービスの料金表にあたるのが診療報酬です。医科診療報酬では「初診料」「再診料」など、調剤診療報酬では「調剤基本料」などがその項目名にあたります。例えば、初診料は288点と決められています。1点10円で計算されるため、初診料は2,880円となります。
医療費の自己負担率は、原則として年齢によって決められており、小学生から69歳までは3割負担です。そのため、初診料の自己負担額は850円、1割負担の方で280円と自分の支払う医療費があらかじめわかるようになっています。
診療報酬は、医療行為ごとに細かく決められており、1点10円で計算することは全国どこの医療機関でも変わりはありません。本来、医療機関で提供する医療行為や医療サービスの価格は医療機関ごとに決めることが可能なものです。しかし、診療報酬制度によって国が医療行為や医薬品代の値段を細かく定めているため、患者さんは法外な医療費を請求される心配なく、医療サービスを受けられるようになっています。
【診療報酬の目的について】
一般的な企業と同じで医療機関を運営していくにもコストがかかります。医師や看護師といった医療従事者の人件費、医療機器や医薬品の購入費用などが必要です。診療報酬の目的は、これらのコストを賄うことにあります。
医療機関は公的医療保険から診療報酬を受け取る仕組みのため、患者さんは診療費を全額負担することなく医療サービスを受けることができます。医療機関も提供した医療サービスに応じて決められた額の報酬が確実に受け取れるため、診療報酬制度は患者さん、医療機関の双方にとってメリットが大きい制度といえます。
【診療報酬の役割と社会への影響について】
診療報酬は病院にかかる患者さん本人のほか、患者さんが加入する公的医療保険からも支払われるものです。医療費のうち、患者さん本人が支払うのは1~3割で、残りを公的医療保険が支払います。
診療報酬制度がなく、患者さんの自己負担額が増額されてしまえば、医療費が払えないため適切な治療が受けられないという方が増えてしまうでしょう。また、医療費が高額になれば患者さんの足が遠のき、患者さん不足に陥ってしまう医療機関が出てくる可能性もあります。さらに、高額な自己負担額を支払える高額所得者だけに医療サービスを提供するという医療機関が出てくる可能性もあるでしょう。
実際に、国民皆保険制度を導入しておらず、診療報酬という考え方がないアメリカは、日本では考えられないような高額な医療費が請求されることで有名です。ニューヨーク市のマンハッタン地区では、盲腸の手術・入院の費用は100万円以上になるといわれています。診療報酬制度はそうしたことを防ぎ、日本の国民皆保険制度を支えるとても大切な制度です。
最後に
診療報酬やその改定についての理解は深まったでしょうか。6月以降はこれまでお支払い頂いていた費用が変わるかもしれませんがこれはこの診療報酬改定の影響だとご理解ください。MY MEDICAでは今後もユーザーにとってメリットのある情報を配信していきますのでぜひご確認ください。
